AGA治療の副作用とは?薬剤別のリスクと対応を解説
AGA治療の副作用は、薬剤ごとに内容が異なります。まとめて語られることが多いのですが、フィナステリドとデュタステリド、内服と外用では確認すべき点が違います。この記事では、公的機関の資料をもとに薬剤別に整理し、症状が出たときにどう動けばよいのかをまとめます。過度に不安をあおる意図はありません。
この記事の要約
- 副作用は薬剤ごとに異なるため、内服と外用、薬剤の種類を分けて確認する必要があります。
- 医薬品医療機器総合機構は2023年8月にフィナステリドの注意事項へ自殺関連事象を追記しました。
- ガイドラインでは性機能障害の相対危険度が1.39で、信頼区間は1をまたいでいます。
- デュタステリドは動物試験の結果から、女性への投与が禁忌とされています。
- 副作用が疑われる場合は、薬の添付文書に従って中止・相談などの対応を取り、処方元へ速やかに連絡してください。
AGA治療の副作用は薬剤ごとに異なる
AGA治療の副作用という言い方でひとまとめにすると、必要な情報が抜け落ちます。同じ5-α還元酵素阻害薬でもフィナステリドとデュタステリドは別の薬であり、ミノキシジルは内服と外用でまったく扱いが異なります。
| 薬剤・使用方法 | 主に確認しておきたい点 |
|---|---|
| フィナステリド内服 | 性機能に関する報告、精神面の注意、肝機能、女性・小児は対象外 |
| デュタステリド内服 | 性機能・精液所見に関する報告、女性への投与は禁忌 |
| ミノキシジル外用 | 使用部位の症状、全身症状があった場合の相談 |
| ミノキシジル内服 | ガイドラインで推奨度Dとされ、行うべきではないとされている |
この表は確認の入口を示すものです。最終的な判断は診察と、各製品の電子添文によります。
AGA治療の初期脱毛は副作用に含まれますか?
治療開始後の一時的な抜け毛の増加は、初期脱毛と呼ばれることがあります。ミノキシジルの比較試験でも報告されていますが、抜け毛が増えた原因は個別に確認する必要があります。
抜け毛の増加だけで、薬が効いている証拠とも、副作用ではないとも判断できません。急激な脱毛、長引く脱毛、頭皮の赤みや痛みがある場合は、初期脱毛と決めつけず医師に相談してください。
AGA治療薬フィナステリドの副作用と注意点
フィナステリドは、テストステロンをジヒドロテストステロンに変換する5-α還元酵素のうちII型を阻害する薬です。承認された効能・効果は「男性における男性型脱毛症の進行遅延」であり、対象は男性に限られます。
フィナステリドの性機能に関する副作用
日本皮膚科学会のガイドラインによると、12件のランダム化比較試験を解析した3,927名対象のシステマティック・レビューでは、性機能障害の相対危険度が1.39(95%信頼区間 0.99〜1.95)とされ、フィナステリド投与群がプラセボ群より上昇する傾向があると報告されています。
この解析の信頼区間は1を含むため、統計的に明確な差が示されたとはいえません。ただし、性機能に関する副作用は電子添文にも記載されており、この解析だけで個人の症状と薬の関係を否定することはできません。症状がある場合は医師に相談してください。
また同ガイドラインは、414名の日本人男性を対象とした試験に続く374名対象の2年間の非ランダム化比較試験について、用量を移行した患者で性機能に関する副作用はなかったとも記載しています。報告は一様ではないということです。気になる症状がある場合は、我慢せず相談してください。
フィナステリドの精神面に関する副作用・注意点
医薬品医療機器総合機構は2023年8月29日付で、フィナステリドの使用上の注意を改訂しました。改訂の内容は次の2点です。
- 重要な基本的注意の項に、自殺関連事象に関する注意事項を追記した
- 特定の背景を有する患者の項に、うつ病、うつ状態またはその既往歴、自殺念慮または自殺企図の既往歴を有する患者を追記した
改訂の背景として、国内症例と世界保健機関のグローバルデータベースを用いた不均衡分析の結果などが評価されたと説明されています。同時に、同資料には、国内の副作用症例においてフィナステリドと自殺関連事象との因果関係が否定できない症例は認められていないとも記載されています。
2023年の安全対策資料に記載された国内報告は、その時点までの集計です。報告件数だけでリスクがないとは判断できません。うつ病などの既往を医師に伝え、服用中に自殺を考えるなどの症状が現れた場合は、服用を中止して速やかに医師へ連絡してください。
フィナステリドの肝機能に関する副作用
日本皮膚科学会のガイドラインは、フィナステリドの重要な副作用として、頻度は明らかではないものの、まれに肝機能障害があらわれることがあると記載しています。
そのため、肝機能に関する既往や、現在服用している他の薬については、治療を始める前に伝えておいてください。だるさが続く、食欲がない、皮膚や白目が黄色くなったといった変化があれば、次の受診を待たずに連絡してください。
なお、頻度が明らかではないとされている以上、この記事で発生率を推測することはしません。実際の記載は各製品の電子添文で確認できます。
AGA治療薬デュタステリドの副作用と注意点
デュタステリドは5-α還元酵素のI型とII型の両方を阻害する薬で、フィナステリドとは別に確認すべき点があります。以下は医薬品医療機器総合機構の承認審査に関する資料に基づく内容です。
デュタステリドの性機能・精液所見に関する副作用
海外で行われた試験では、18〜52歳の健康成人を対象に、デュタステリド0.5mgを1日1回52週間投与した際の精液の性状が評価されています。対象は本剤群27例、プラセボ群23例です。
プラセボ群の投与前値からの変化で調整した結果、投与52週目の総精子数、精液量、精子運動率の平均減少率はそれぞれ23%、26%、18%であり、精子濃度と精子形態への影響は認められませんでした。精液量の減少は統計学的に有意であったとされています。
| 評価項目 | 投与52週目の平均減少率 |
|---|---|
| 総精子数 | 23% |
| 精液量 | 26% |
| 精子運動率 | 18% |
| 精子濃度・精子形態 | 影響は認められず |
海外の健康成人27例を対象とした試験の結果であり、そのまま個人に当てはまる数値ではありません。
同じ資料は、いずれの評価時期においても、すべての精液の指標の平均値は正常範囲内であり、事前に規定した臨床的に重要な変動には至らなかったとも記載しています。そのうえで、この影響が個々の患者の受胎能に対してどのような臨床的意義を持つかは不明であるとしています。数値だけを取り出さず、この但し書きまで含めて理解してください。
臨床試験では、このほかリビドー減退、射精障害、勃起不全、女性化乳房などが評価項目とされています。パートナーの妊娠を希望している場合は、その旨を治療開始前に伝えてください。
デュタステリドが女性への投与禁忌となる理由
同資料によると、ラットとウサギにデュタステリドを経口投与した結果、雄胎児の外生殖器の雌性化がみられ、血清中ジヒドロテストステロンの低下により男子胎児の外生殖器の発達を阻害する可能性が示唆されました。この理由から、デュタステリドの女性への投与は禁忌とされています。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、フィナステリドとデュタステリドはいずれも女性型脱毛症に推奨度Dとされ、行うべきではないとされています。フィナステリドについても、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性への投与は禁忌です。
そのため、家族が誤って服用したり、薬に触れたりすることのないよう、保管の方法にも注意が必要です。処方を受けるときに、保管と取り扱いについて確認しておいてください。
デュタステリドの肝機能に関する副作用
デュタステリドについても、肝機能に関する注意はフィナステリドとは別に確認する必要があります。同じ5-α還元酵素阻害薬であっても、記載内容をそのまま流用することはできません。
ザガーロの電子添文では、重大な副作用として肝機能障害と黄疸が記載されており、頻度は不明とされています。肝臓の病気がある場合や、他の薬を使用している場合は、処方前に医師へ伝えてください。異常が認められた場合は、中止を含む対応を医師が判断します。
AGA治療薬ミノキシジル外用の副作用と注意点
ミノキシジルの外用は、日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度Aとされ、男性型脱毛症には5%、女性型脱毛症には1%と濃度が示されています。塗る薬であるため、確認すべき点は内服とは異なります。
ミノキシジル外用で頭皮に現れる副作用
使用した部位に、かゆみ、発赤、かぶれといった症状が起こることがあります。具体的な内容と頻度は製品によって異なるため、使用している製品の添付文書または電子添文で確認してください。
ミノキシジル外用中に発疹、赤み、かゆみ、頭痛、めまい、胸の痛み、動悸など、添付文書に記載された症状が出た場合は、使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
ミノキシジル外用で全身症状がある場合の対応
外用だから体には影響しない、と決めつけないでください。動悸、胸の症状、めまい、むくみといった全身の変化があった場合は、使用を続ける前に相談してください。
特に、胸の痛みや息苦しさなど緊急性が疑われる症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。どのくらいの頻度で起こるのかについては、この記事で推測することはしません。判断は診察と製品の記載によります。
AGA治療でミノキシジル内服が推奨されない理由
日本皮膚科学会のガイドラインでは、ミノキシジルの内服は推奨度Dとされ、行うべきではないとされています。外用の推奨度Aとは正反対の扱いです。
2017年版ガイドラインは、当時の有効性・安全性に関する根拠を踏まえ、ミノキシジル内服を推奨していません。その後、2024年に内服と外用を比較するランダム化比較試験が公表されましたが、この試験では主要な毛髪評価項目で内服の外用に対する優越性は示されませんでした。試験があることと、国内で承認・推奨されていることは別に確認する必要があります。
そのうえで、内服用製剤の情報には、胸痛、心拍数の増加、動悸、息切れ、呼吸困難、うっ血性心不全、むくみや体重増加といった重大な心血管系の障害に関する記載があると説明されています。ガイドラインは、利益と危険性が十分に検証されていないため、男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに行わないよう強く勧められると結論づけています。
ミノキシジル内服を検討する際は、使用する製剤の国内承認状況、AGAへの適応、有効性と安全性の根拠を確認する必要があります。2017年版ガイドラインでは推奨度Dとされているため、外用薬と同じ位置づけで扱わないようにしてください。
AGA治療の副作用が疑われるときの対応
副作用が疑われる場合は、使用している薬の添付文書に従い、処方元や薬剤師へ速やかに相談してください。使用中止が指示されている症状が出た場合は、相談まで使用を続けず中止してください。フィナステリド服用中に自殺を考えるなどの症状が現れた場合は、服用を中止し、速やかに医師へ連絡してください。
- 症状の内容と、出始めた時期を記録する
- 現在服用している薬をすべて確認できるようにする
- 処方を受けている医療機関へ連絡する
- 指示に従って受診し、続けるかどうかを判断してもらう
記録があると、薬との関係を判断しやすくなります。一方で、緊急性が疑われる症状がある場合は、記録をそろえることより受診を優先してください。
医師には、症状が始まった時期と使用状況を伝えてください。中止した場合は、中止日とその後の変化も判断材料になります。中止後に症状が軽くなっても、自己判断で再開しないでください。
AGA治療薬を個人輸入するリスク
副作用の話と個人輸入の話は、切り離せません。医師の管理下にない使用では、確認の仕組みそのものが働かないためです。
厚生労働省は、個人輸入される医薬品などの品質、有効性、安全性については国内の法律に基づく確認がなされていないとしています。そのうえで、期待する効果が得られなかったり、人体に有害な物質が含まれている場合があるとし、正規のメーカー品を偽った偽造製品である可能性にも触れています。
さらに、個人輸入された医薬品による健康被害については救済の対象とならないと明記されています。国内で承認された医薬品を適正に使用した場合の健康被害には公的な救済の仕組みがありますが、個人輸入はその枠の外に置かれます。
副作用が心配だからこそ、診察を受けて処方してもらう意味があります。何かあったときに相談できる相手がいるかどうかは、大きな違いです。
AGA治療の副作用に関するよくある質問
副作用について寄せられることが多い質問をまとめました。確認できていない事柄については、その旨を記しています。
Q.AGA治療の副作用は服用をやめれば戻りますか?
A.中止後の経過は薬剤や症状によって異なり、必ず元に戻るとはいえません。副作用が疑われるときは添付文書の指示に従って対応し、医師に症状と発症時期を伝えてください。中止後も症状が続く場合は診察を受け、再開は医師に確認してください。
Q.AGA治療薬は献血や健康診断に影響しますか?
A.日本赤十字社の案内では、フィナステリドは服用中止後1か月間、デュタステリドは服用中止後6か月間、献血できません。献血のために自己判断で治療を中止せず、献血時には薬の名前を伝えてください。献血できるかどうかは、当日の健康状態も含めて判断されます。
フィナステリドはPSA値を低下させるため、検査を受ける際には服用中であることを医師に伝えてください。結果の補正や評価は医師が行います。
Q.AGA治療薬の副作用はどのくらいの頻度で起こりますか?
A.頻度は薬剤、用量、研究の条件によって異なります。異なる資料の数値を並べて比べることはできません。この記事で挙げた数値も、それぞれ対象と期間が示された特定の試験の結果です。個人にどのくらいの確率で起こるかを示すものではありません。気になる場合は、処方される製品の記載を医師や薬剤師に確認してください。
Q.性機能への影響が心配な場合はどうすればよいですか?
A.治療を始める前に、既往歴と、パートナーの妊娠を希望しているかどうかを医師に伝えてください。これは恥ずかしい話ではなく、薬剤の選択に関わる情報です。開始後に症状が出た場合も、内容と出始めた時期を記録して相談してください。自己判断で薬を変えたり、量を減らしたりしないでください。
Q.副作用を減らすために自分で薬を減らしてもよいですか?
A.自己判断で行わないでください。減量、服用間隔の変更、併用している薬の中止は、効果と安全性の両方に関わります。臨床試験で示された結果は、定められた用量を継続した場合のものです。副作用が気になる場合は、その事実を伝えてください。医師が薬剤の変更や中止を含めて判断します。
まとめ
AGA治療の副作用は薬剤ごとに異なります。ミノキシジルも、外用と内服では承認や推奨の扱いが異なるため、分けて確認する必要があります。
研究の平均値や統計上の有意差だけで、個人の副作用を否定することはできません。症状が出た場合は添付文書に従って対応し、中止が指示されている症状では使用を続けず、医師や薬剤師へ相談してください。
参考・出典
日本皮膚科学会 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/AGA_GL2017.pdf
医薬品医療機器総合機構 フィナステリドの「使用上の注意」の改訂について(2023年8月29日) https://www.pmda.go.jp/files/000263931.pdf
医薬品医療機器総合機構 ザガーロカプセル 審査関連資料 CTDの概要 2.5 臨床に関する概括評価 https://www.pmda.go.jp/drugs/2015/P20151001001/340278000_22700AMX01012_G100_1.pdf
厚生労働省 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html