AGA治療の効果とは?治療法別の根拠と判定方法・限界を解説
AGA治療の効果は、どこまでが根拠のある話で、どこからが個人の体験なのかが分かりにくい領域です。
この記事では、日本皮膚科学会のガイドラインに掲載された臨床試験の結果をもとに、治療法ごとの根拠と、効果をどう判定するのかを整理します。
数値はいずれも試験条件下の結果であり、個人の結果を示すものではありません。
この記事の要約
- フィナステリドの承認された効能・効果は男性型脱毛症の進行遅延であり、進行を抑えることが主眼です。
- 国内の414名を対象とした48週間の試験では、1mg/日で58%が軽度改善以上とされています。
- 同じ用量を継続した試験では、2年間で68%、3年間で78%に軽度改善以上の効果が得られています。
- 効果は日々の見た目では分かりにくいため、同じ条件での写真記録と診察での評価が用いられます。
- 医薬品医療機器総合機構は2023年8月にフィナステリドの注意事項を改訂し、注意を追記しています。
AGA治療で期待できる変化
まず前提として、治療はAGAという診断があって初めて成り立ちます。薄毛の原因は他にもあり、原因が違えば治療の内容も変わります。そのうえで、AGA治療が何を目的としているのかを確認しておきましょう。
フィナステリドの承認された効能・効果は「男性における男性型脱毛症の進行遅延」です。つまり、進行を遅らせることが治療の主眼になります。実際の臨床試験では硬毛が増えたという結果も報告されていますが、元の状態に戻ることや、すべての毛が再び生えることを示すものではありません。
現実的な目標としては、抜け毛の進行を抑えること、細く短い毛が太くしっかりした毛に変わる割合を増やすこと、そして現在の状態を保つことが挙げられます。変化の程度には個人差があり、治療を始めた時点の進行度によっても違います。
AGA治療法別にみた効果の根拠
以下は日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」に掲載されている内容です。数値は特定の試験条件下で得られた結果であり、個人の結果を約束するものではありません。
フィナステリド内服
ガイドラインでは男性型脱毛症に推奨度Aとされ、内服を行うよう強く勧められています。一方、女性型脱毛症には推奨度Dで、行うべきではないとされています。
国内では、414名の日本人男性を対象とした48週間のランダム化比較試験が行われています。頭頂部の写真撮影による効果判定では、1mg/日で58%、0.2mg/日で54%が軽度改善以上の効果を示したと報告されています。
| 継続期間 | 軽度改善以上の割合(1mg/日) |
|---|---|
| 48週間 | 58% |
| 2年間 | 68% |
| 3年間 | 78% |
48週間はランダム化比較試験、2年間と3年間は引き続き行われた非ランダム化比較試験の結果です。
また、12件のランダム化比較試験を解析した3,927名対象のシステマティック・レビューでは、脱毛部1cm²あたりの硬毛数が、投与6か月後と24か月後のいずれの時点でもプラセボ群より有意に増加していたとされています。
デュタステリド内服
こちらも男性型脱毛症に推奨度A、女性型脱毛症に推奨度Dとされています。フィナステリドが5-α還元酵素のII型を阻害するのに対し、デュタステリドはI型とII型の両方を阻害します。
日本を含む国際臨床試験では、917名の男性を対象に、デュタステリド0.5mg/日とフィナステリド1mg/日を比較する6か月間のランダム化比較試験が行われています。全毛髪数と毛の直径の増加についてはデュタステリドが優れた結果を示した一方、直径60マイクロメートル以上の硬毛数では両者に有意な差がありませんでした。
写真評価では、治験担当者の評価で両群間に有意な差はなく、専門家パネルの評価ではデュタステリドが優れたものの、その点数差は頭頂部で0.14、前頭部で0.24とわずかでした。ガイドラインは、両者の効果の差については今後さらなる検討を要するとしています。どちらが優れているとは断定できません。
ミノキシジル外用
推奨度Aで、行うよう強く勧められています。推奨文では、男性型脱毛症には5%ミノキシジル、女性型脱毛症には1%ミノキシジルと濃度が示されています。
濃度の比較としては、393名の男性を対象とした48週までのランダム化比較試験があります。脱毛部1cm²内の非軟毛数のベースラインからの増加は、プラセボ群で平均3.9本、2%ミノキシジル群で平均12.7本、5%ミノキシジル群で平均18.6本でした。
なお、ミノキシジルの内服は推奨度Dとされており、外用とはまったく別の扱いです。
AGA治療の効果はどのように判定するか
臨床試験では、主観に頼らない方法で効果が評価されています。実際の診療でも、同じ考え方が使われます。
- 同じ条件で撮影した写真による比較評価
- 一定面積あたりの毛髪数の測定
- 毛の直径の測定
- 軟毛と硬毛の割合の変化
毎日鏡を見ていると、照明や髪の乾き具合、整え方によって印象が変わるため、変化を正しくとらえにくくなります。抜け毛の本数も、日によって差があり、それだけで判断できるものではありません。
そのため、治療を始める前と経過の途中で、同じ場所、同じ明るさ、同じ角度の写真を残しておくと、診察のときに比較しやすくなります。判定にどのくらいの期間が必要かについては、効果の時期を扱った記事で詳しく解説しています。
AGA治療の効果が出にくいことがある要因
同じ治療でも結果に差が出ます。以下は関係し得る要因であり、本人の努力不足を意味するものではありません。
進行の程度
ガイドラインに掲載された801名の日本人男性を対象とした観察研究では、フィナステリド1mg/日を5年間継続した写真評価で99.4%の症例に効果が得られたとされ、40歳未満の症例や重症度の低い症例でより高い効果を示したと報告されています。進行の程度が結果に関わる可能性を示す内容です。
服薬・外用の継続状況
内服や外用が続いていなければ、試験で示された結果とは前提が変わります。飲み忘れが続いている、外用を塗る量や回数が指示と違うといった場合は、正直に伝えてください。
責められる話ではなく、評価のために必要な情報です。自己判断で量を増やしたり、間隔を空けたりすることは避けてください。
AGA以外の脱毛症
薄毛の原因がAGAではない場合、AGAに対する治療を続けても想定した変化は得られません。
脱毛症には複数の種類があり、進み方や必要な対応が異なります。
想定した期間を過ぎても変化がない場合は、診断そのものを見直す必要があるかどうかを相談してください。
AGA治療を中止した場合の考え方
治療の目的が進行を遅らせることである以上、やめた後にどうなるかは知っておく必要があります。
ガイドラインは、フィナステリドについて内服を中止すると効果は消失するとしています。AGAは進行するものであり、治療によって抑えていた進行が、中止によって再び現れることになります。
ただし、中止後にどのくらいの期間でどう変化するかには個人差があり、一律には示せません。費用や副作用、生活の変化などで続けられなくなることもあります。
その場合も自己判断で止めるのではなく、状況を伝えたうえで医師と相談してください。中止という選択自体は、相談できる事柄です。
AGA治療の効果とあわせて知っておく副作用
効果だけを見て判断すると、必要な情報が欠けます。公的機関が示している注意事項を確認しておきましょう。
医薬品医療機器総合機構は2023年8月29日付で、フィナステリドの使用上の注意を改訂しました。重要な基本的注意の項に自殺関連事象に関する注意事項が追記され、うつ病、うつ状態またはその既往歴、自殺念慮または自殺企図の既往歴を有する患者が、特定の背景を有する患者として追記されています。該当する場合は、必ず受診時に申告してください。
ガイドラインでは、性機能障害について、システマティック・レビューにおける相対危険度が1.39とされ、フィナステリド投与群がプラセボ群より上昇する傾向があると報告されています。また、頻度は明らかではないものの、まれに肝機能障害があらわれることがあるとされています。
このほか、フィナステリドの投与により前立腺癌のマーカーである血清PSA濃度が約50%低下することが示されています。ガイドラインは、投与中に前立腺癌診断の目的でPSA濃度を測定する場合は、2倍した値を目安として評価すべきだとしています。他科を受診する際は、服用していることを伝えてください。
気になる症状が出た場合は、自己判断で中止したり量を変えたりせず、処方を受けている医療機関に相談してください。
AGA治療の効果に関するよくある質問
効果について寄せられることが多い質問をまとめました。数値はいずれも試験条件下の結果です。
効果はどのくらいの人に現れますか?
国内の414名を対象とした48週間の試験では、フィナステリド1mg/日で58%が軽度改善以上とされ、継続した試験では2年間で68%、3年間で78%と報告されています。
ただし、これは特定の条件で行われた試験の結果です。年齢や進行度、継続状況によって変わります。
薬をやめたら元に戻りますか?
元の状態に戻るという表現よりも、抑えていた進行が再び現れると考える方が実態に近い説明になります。
どのくらいの期間でどう変化するかには個人差があり、一律には示せません。
費用や体調の事情でやめたい場合も、自己判断ではなく理由を伝えたうえで医師に相談してください。
まとめ
AGA治療の効果を考えるときは、まず治療が何を目的としているかを押さえる必要があります。フィナステリドの承認された効能・効果は男性型脱毛症の進行遅延であり、進行を抑えることが主眼です。
国内の試験では、1mg/日で48週間に58%、継続により2年間で68%、3年間で78%が軽度改善以上とされています。ただしこれは試験条件下の結果であり、年齢や進行度によって変わります。自分の結果を示す数値ではありません。
変化は日々の見た目では判断しにくいため、同じ条件での写真記録と診察での評価が役立ちます。気になる症状が出た場合は自己判断で中止せず、処方を受けている医療機関へ相談してください。
参考・出典
日本皮膚科学会 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/AGA_GL2017.pdf
医薬品医療機器総合機構 フィナステリドの「使用上の注意」の改訂について(2023年8月29日) https://www.pmda.go.jp/files/000263931.pdf