EDの原因は複雑ですが、その多くは血管の健康状態と深く関わっています。勃起のメカニズムは、性的興奮により脳から信号が送られ、陰茎の血管が拡張して血液が流れ込むことで起こります。つまり、血管が健康でなければ十分な勃起は得られません。日々の食事は血管の健康に直接影響するため、食生活の改善はED対策の第一歩となります。 ED改善に関わる食べ物を紹介 EDの改善では、血流を促進し、男性ホルモンの生成をサポートする栄養素を含む食べ物を意識的に摂取できると良いでしょう。 亜鉛 アルギニン シトルリン ビタミンE レスベラトロール 男性ホルモン産生に関与する亜鉛 亜鉛は「セックスミネラル」とも呼ばれ、男性ホルモンであるテストステロンの生成を促進します。テストステロンは性欲や勃起機能に直接関わるホルモンで、亜鉛不足はテストステロン値の低下を招き、EDのリスクを高めます。 亜鉛を多く含む食材として、牡蠣が特に有名です。牡蠣100gあたりには約14mgもの亜鉛が含まれており、成人男性の1日の推奨摂取量(11mg)を上回ります。他にも牛肉の赤身、豚レバー、チーズ、卵黄、アーモンドなどのナッツ類にも豊富に含まれています。 亜鉛は汗とともに体外に排出されやすいため、運動習慣がある方は特に意識して摂取することが大切です。 血管拡張で勃起を誘発するアルギニン アルギニンはアミノ酸の一種で、体内で一酸化窒素(NO)を生成する材料となります。一酸化窒素には血管を拡張させる強力な作用があり、陰茎への血流を増加させることで勃起を促進します。実際、ED治療薬の多くも、この一酸化窒素の働きを高めることで効果を発揮しています。 アルギニンは鶏肉や牛肉などの肉類、大豆製品、うなぎ、にんにく、エビ、マグロなどに多く含まれています。特に鶏むね肉は高タンパクで脂肪分も少なく、アルギニンを効率的に摂取できる優れた食材です。 【亜鉛・アルギニンが含まれるメニュー例】 アルギニンを生成するシトルリン シトルリンは体内でアルギニンに変換されるアミノ酸で、アルギニンと同様に一酸化窒素の生成を促進し、血管拡張作用をもたらします。シトルリンの特徴は、アルギニンよりも吸収効率が良く、体内での利用率が高いことです。そのため、アルギニンと併せて摂取することで相乗効果が期待できます。 シトルリンはスイカに特に多く含まれており、その他メロンやきゅうり、ゴーヤなどのウリ科の植物にも含まれています。夏場はスイカを積極的に食べることで、自然にシトルリンを摂取できます。 【シトルリン・アルギニン・ビタミンEが含まれるメニュー例】 血管の老化を防ぐビタミンE ビタミンEは強力な抗酸化作用を持つ脂溶性ビタミンです。体内で発生する活性酸素から血管を守り、血管の老化を防ぐ重要な役割を担っています。血管が老化すると動脈硬化が進行し、EDのリスクが高まります。ビタミンEはこの進行を抑制し、血管をしなやかに保つことでED予防に貢献します。 アーモンドやくるみなどのナッツ類、アボカド、うなぎ、ひまわり油などの植物油、かぼちゃ、ほうれん草などにビタミンEが豊富に含まれています。特にアーモンドは手軽に摂取できる優れた食材で、1日20粒程度で必要量を補えます。ビタミンEは油と一緒に摂取すると吸収率が高まるため、サラダにナッツをトッピングしてオリーブオイルをかけるなど、調理方法を工夫することでより効果的に摂取できます。 【ビタミンE・アルギニン・亜鉛が含まれるメニュー例】 勃起機能回復が期待できるレスベラトロール レスベラトロールは赤ワインや高カカオチョコレート(カカオ含有量70%以上)などに含まれるポリフェノールの一種です。強い抗酸化作用により血管内皮機能を改善し、血流を促進する効果が報告されています。また、一酸化窒素の産生を促進する作用もあり、ED改善への効果が期待されています。サプリメントでの摂取も選択肢の一つですが、食事から自然に摂取することを基本とし、サプリメントは補助的に活用することが推奨されます。 EDが気になる方は避けたい食事 脂肪分の多い食事 揚げ物やファストフード、脂身の多い肉類など、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む食事は、血中の悪玉コレステロールを増加させ、動脈硬化を進行させます。動脈硬化は血管を狭め、硬くすることで血流を悪化させ、EDの直接的な原因となります。 特にファストフードなどの食事は肥満の原因にもなり、肥満自体がEDのリスク因子であることも明らかになっています。脂肪分の多い食事を週に1〜2回程度に制限し、代わりに焼き魚や蒸し料理、煮物など、油を控えた調理法を選ぶことが大切です。 塩分の多い食事 ラーメンやカップ麺、加工肉、漬物など、塩分を多く含む食事は高血圧の原因となり、血管にダメージを与えます。高血圧状態が続くと血管壁が厚くなり、弾力性を失って動脈硬化が進行します。これにより陰茎への血流が低下し、EDのリスクが高まります。 日本人男性の1日の食塩摂取目標量は7.5g未満ですが、ラーメン1杯には約6gもの塩分が含まれていることもあります。外食や加工食品に頼りがちな現代の食生活では、知らず知らずのうちに塩分を過剰摂取している可能性があります。麺類のスープは残す、醤油やソースは「かける」のではなく「つける」、香辛料や酢を活用して塩分を減らすなど、日常的な減塩の工夫が必要です。 喫煙している人も注意 タバコはEDの最も重要な危険因子の一つです。ニコチンには血管を収縮させる作用があり、陰茎への血流を著しく低下させます。また、喫煙は血管内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を促進することで、長期的にも血管機能を悪化させます。 喫煙者は非喫煙者と比較してEDのリスクが約2倍高いという研究結果もあります。1日の喫煙本数が多いほど、また喫煙期間が長いほどリスクは高まります。電子タバコや加熱式タバコも血管への悪影響は避けられません。ED改善を真剣に考えるなら、禁煙は避けて通れない道です。禁煙外来を利用することで、医学的なサポートを受けながら確実に禁煙を達成することができます。 食事と合わせて検討したいこと 食事改善だけでなく、運動や医学的な治療を組み合わせることで、より効果的なED対策が可能になります。 適度な運動 有酸素運動は全身の血流を改善し、血管機能を高める効果があります。週3回、30分程度のウォーキングやジョギングから始めることで、徐々に血管の健康状態が改善されていきます。 下半身の筋力トレーニングも重要です。スクワットやランジなどの運動は、骨盤周辺の血流を改善し、テストステロンの分泌を促進します。また、骨盤底筋を鍛える運動(ケーゲル体操)は、勃起の維持力を高める効果が期待できます。運動後はタンパク質を含む食事を摂ることで、筋肉の回復と成長を促進できます。 ▶︎ED回復トレーニングについてのコラム テストステロン補充療法 加齢やストレスによって男性ホルモンが低下している場合、医療機関でテストステロン補充療法を受けることで、EDの改善が期待できます。血液検査でテストステロン値を測定し、基準値を下回っている場合に適応となります。 治療方法には注射、塗り薬などがあり、それぞれに特徴があります。注射は2〜4週間に1回の投与で効果が持続し、塗り薬は毎日の使用が必要ですが副作用が少ないという利点があります。テストステロン補充により、EDの改善だけでなく、筋力の向上、気力の回復、体脂肪の減少などの効果も期待できます。ただし、前立腺がんのリスクがある方には適用できないため、必ず医師の診断を受けて治療を開始する必要があります。 ▶︎テストステロン補充療法についてのコラム 陰圧式勃起補助具 薬物治療が困難な方や、薬の効果が不十分な方には、陰圧式勃起補助具という物理的な方法でEDに対処する選択肢があります。これは陰茎をシリンダーに入れて真空状態を作り、血液を引き込んで勃起状態を作り出す医療機器です。 使用方法は比較的簡単で、勃起後は陰茎の根元にゴムリングを装着して血液の流出を防ぎます。薬物を使用しないため、心臓病や高血圧などで薬が使えない方でも安全に使用できます。効果は即効性があり、約80%の使用者が満足できる勃起を得られるという報告もあります。 ▶︎陰圧式勃起補助具についてのコラム アトムクリニック/診療メニュー/ED治療/EDは食事で改善できる?勃起力を高める食べ物と避けるべき食生活