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EDの注射治療とは?国内での位置づけと実施の条件を解説

EDの陰茎海綿体注射は、検査で用いる場合と治療で用いる場合があり、院内で医療者が行う注射と自己注射も区別する必要があります。この記事では、それぞれの位置づけ、ガイドラインの記載、主なリスクと確認事項を整理します。

この記事の要約

EDの注射治療とは

この記事で扱うEDの注射治療は、プロスタグランジンE1を陰茎海綿体に注射する方法です。陰茎海綿体注射と呼ばれ、英語の頭文字からICIとも表記されます。幹細胞を用いた治療など、別の注射治療とは区別してください。

日本性機能学会と日本泌尿器科学会が編集したED診療ガイドライン第3版には、検査として行う場合の方法として、通常5〜20μgを生理食塩水1mlに溶解して使用し、なるべく細い注射針を用いて左右いずれかの陰茎海綿体内に注入すると記載されています。左右の海綿体はつながっているため、片側への注射で足りるとされています。

なお、手技の詳細をここで説明するのは、実際の内容を理解してもらうためであり、自分で実施するための情報ではありません。後述するとおり、国内では実施の条件が限られています。

EDの注射治療で勃起が促される仕組み

プロスタグランジンE1が陰茎海綿体の平滑筋に作用し、血流が増えることで勃起が促されると考えられています。薬が直接その部位に届く点が、内服薬との大きな違いです。

内服のPDE5阻害薬は、性的な刺激があったときに働く仕組みの薬であり、作用の仕方が異なります。どちらが優れているという話ではなく、仕組みが違うということです。

EDの注射治療の日本での位置づけと実施条件

2018年版のED診療ガイドラインは、プロスタグランジンE1の陰茎海綿体内自己注射について、当時は国内未承認であり、学会の多施設共同研究への参加と施設の倫理委員会の承認を条件としていました。この記載は自己注射に関する当時の説明であり、院内で医療者が行う注射を含む現在のすべての実施条件と同じとは限りません。

注射の目的、薬剤、投与方法によって、承認や提供条件の確認が必要です。診断目的か治療目的か、院内で行う注射か自己注射かを区別して、受診先に確認してください。

厚生労働省の医療広告等ガイドラインは、未承認の医薬品を自由診療で使用する場合に示すべき事項を定めています。それに沿って整理すると次のようになります。

確認事項 現時点で分かっていること
承認の有無 2018年版ガイドラインでは、治療目的の自己注射は当時国内未承認と記載
実施の条件 2018年版ガイドラインでは、当時の自己注射に研究参加と倫理委員会承認の条件を記載
国内の承認医薬品 診断目的では、2011年2月23日に注射用製剤が勃起障害の診断の効能・効果を取得している
救済制度 国内未承認薬は医薬品副作用被害救済制度の対象外。承認薬の適応外使用は個別判断

治療目的と診断目的では扱いが異なります。この違いは後の章で改めて説明します。

国内未承認の医薬品による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度の対象になりません。一方、国内承認薬を適応外で使用した場合は、それだけで一律に対象外になるとは限らず、使用目的や方法などを踏まえて個別に判断されます。使用薬剤の承認と適応、健康被害への対応について説明を受けてください。

ED治療の診療ガイドラインでの推奨

ガイドラインがどう述べているかを、言葉のとおりに確認しておきます。

ED診療ガイドライン第3版のCQ13は「PDE5阻害薬が無効または禁忌のED患者に対してどの治療法が最も有用か?」という設問です。その推奨文は「PDE5阻害薬が無効または禁忌のED患者に対して、陰圧式勃起補助具またはプロスタグランジンE1の海綿体注射を行うことを弱く推奨する」となっています。

ここで注意したいのが、弱く推奨するという表現です。同ガイドラインの推奨の段階は、行うことを強く推奨する、行うことを弱く推奨する、行わないことを弱く推奨する、行わないことを強く推奨する、の4段階で示されています。弱く推奨するを強く推奨すると読み替えないでください。

また、この推奨はPDE5阻害薬が無効または禁忌の患者を対象としたものです。最初から選ぶ治療として推奨されているわけではありません。

EDの注射治療が検討されるのはどのケース

どのような場面で選択肢に挙がるのかを確認します。前提として、原因の評価と標準的な治療の検討が先に行われます。

ED診療ガイドライン第3版は、PDE5阻害薬がED治療の第一選択であるとしたうえで、約30%の無効例があり、さらに硝酸薬や一酸化窒素供与薬を内服中で使用が禁忌となる症例も存在すると記載しています。

PDE5阻害薬で十分な効果が得られない場合

効果が不十分な場合でも、すぐに注射治療へ進むわけではありません。同ガイドラインは、まず正規の薬剤を使っていたかを確認する必要があるとしています。医師の処方以外のインターネットサイトから入手したPDE5阻害薬の成分分析に関する研究では、24〜77%が偽造薬であったことが判明していると記載されています。

次に、正しく服薬していたかの確認と、改めての服薬指導が行われます。同ガイドラインには、シルデナフィルが無効だった220名に十分な服薬指導を行った結果、2か月後には59%が有効になったという報告や、100名への服薬指導後に55%で有効になったという報告が紹介されています。

つまり、内服薬が効かなければすぐ注射、という順序ではありません。使い方の見直しや原因の再評価を経たうえで、医師が検討する選択肢です。

PDE5阻害薬を使用できない場合

硝酸薬や一酸化窒素供与薬を服用している場合、PDE5阻害薬は併用禁忌となります。ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジルなどが該当し、併用すると過度に血圧が低下することがあるとされています。

ただし、PDE5阻害薬が使えないことが、そのまま注射治療の適応を意味するわけではありません。注射治療の適否も、基礎疾患や併用している薬を含めて医師が判断します。服用中の薬は、お薬手帳などを持参して正確に伝えてください。

EDの注射治療を検査として行うケースはどうなる

同じ注射でも、治療目的と検査目的では国内での扱いが異なります。ここは混同されやすい部分です。

プロスタグランジンE1の陰茎海綿体注射は、血管系の機能を評価する検査としても行われます。ED診療ガイドライン第3版によると、血管系の機能が正常であれば注射後10分以内に勃起が発現し、30分以上持続するとされ、反応が不十分な場合は動脈からの血流の不足または静脈の閉鎖不全の存在が示唆されるとされています。

同ガイドラインには、日本では2011年2月23日に注射用の製剤が勃起障害の診断という効能・効果を取得し、EDの診断薬として保険診療が可能となったと記載されています。診断を目的とする場合と、治療として自己注射を行う場合とでは、承認上の位置づけが異なるということです。

また、労働災害によるEDの認定には、夜間の勃起現象の評価と、プロスタグランジンE1の海綿体注射による血管系の評価が必須とされているとも記載されています。検査として行われる場面があることを押さえておいてください。

EDの注射治療で報告されている副作用・注意点

報告されている内容と、確認できていない内容を分けて示します。

ED診療ガイドライン第3版は、自己注射の継続を中断する理由として疼痛による例が多いと記載しています。また、最も注意すべき副作用は持続勃起症であり、速やかな対処が求められるとしています。

主な副作用|痛み・出血・硬結など

注射に伴うものとして、次のような症状が挙げられます。

このうち、痛みについては継続の中断理由として多いと記載されています。一方、それぞれの症状がどのくらいの頻度で起こるのかについては、確認できた一次情報がありません。そのため、この記事では頻度を示さず、起こることがあるという表現にとどめます。症状の程度にも個人差があります。

持続勃起症が疑われる場合の受診目安

持続する勃起は、血流の障害によって組織を傷めるおそれがあります。勃起が4時間以上続く場合は速やかな受診が必要です。強い痛みなどがある場合は、4時間を待たずに医療機関へ相談してください。

勃起が4時間以上続く場合は様子を見ず、夜間や休日でも泌尿器科または救急の医療機関を受診してください。受診時には、注射した薬の名前と時刻を伝えてください。

治療を受ける前に、異常時の連絡先と時間外の受診先を確認しておきましょう。症状が出た場合は、連絡先が分からなくても様子を見ず、救急の医療機関へ相談してください。

PDE5阻害薬とEDの注射治療の違い

両者は投与の方法も、国内での位置づけも異なります。どちらが優れているという整理はできません。

項目 PDE5阻害薬(内服) 陰茎海綿体注射(治療目的)
投与の方法 内服 陰茎海綿体への注射
国内での承認 承認された治療薬がある 2018年版では自己注射は当時未承認と記載
ガイドラインでの位置づけ ED治療の第一選択 無効または禁忌の場合に弱く推奨
実施できる場所 診察を受けた医療機関で処方 注射の目的・方法に応じて提供の有無と実施体制を確認する

適応は原因や併用している薬によって変わります。判断は診察によります。

EDの注射治療のメリット

PDE5阻害薬で十分な効果が得られない場合や、硝酸薬などの服用により使用できない場合に、選択肢として検討され得る点が挙げられます。ガイドラインの推奨文にも、そうした患者を対象として記載されています。

また、薬が作用する部位に直接届く方法である点も内服との違いです。ただし、内服薬より優れていると一律に評価できるものではなく、有効性には個人差があります。

EDの注射治療のデメリット

注射という方法そのものへの心理的な抵抗や、身体的な負担があります。痛みは継続の中断理由として多いと記載されており、軽視できません。

注射治療を検討する場合は、使用する薬剤と適応、実施方法、費用、健康被害が起きた際の対応を確認してください。持続勃起症など、速やかな処置が必要になるリスクもあります。承認された薬剤の適応外使用と未承認薬の使用では、救済制度の扱いも区別が必要です。

これらは不安をあおるために挙げているのではなく、医師の管理下で検討すべき治療であることを示すためのものです。

EDの注射治療を検討する前に確認したいこと

確認しておきたい項目を整理しました。答えが得られない項目がある場合は、その場で決めないでください。

また、個人輸入や、医師の管理外での使用は行わないでください。厚生労働省は、個人輸入される医薬品などの品質、有効性、安全性については国内の法律に基づく確認がなされていないとし、健康被害が生じても救済の対象とならないとしています。

費用の内訳と総額を確認する

初診料、検査料、薬剤の費用、指導にかかる費用、再診料など、開始時と継続時にそれぞれ何がかかるのかを確認してください。

費用は医療機関や内容によって異なるため、相場として示された金額をそのまま前提にしないでください。総額と、追加費用が生じる条件を事前に確認することをおすすめします。

実施施設の条件と緊急時の連絡先を確認する

使用する薬剤、診断目的か治療目的か、院内での注射か自己注射かを確認してください。そのうえで、現在の承認・適応、実施体制、費用や健康被害への対応について説明を受けましょう。

あわせて、異常が生じた場合の連絡先と、夜間や休日の受診先が示されているかも確認しておいてください。持続勃起症のように、時間の経過が問題になる事態があるためです。

EDの注射治療に関するよくある質問

注射治療について寄せられることが多い質問をまとめました。個別の可否は受診先で確認してください。

Q.保険は使えますか?

A.費用の扱いは、使用する薬剤と投与方法、診断目的か治療目的かによって異なります。2018年版ガイドラインには治療目的の自己注射を自費診療とする記載がありますが、実際の保険適用と自己負担額は、現在の制度と受診先の取り扱いを確認してください。

Q.自分で注射することはできますか?

A.自己判断で薬剤を入手して注射しないでください。陰茎海綿体注射には持続勃起症などのリスクがあり、適応の判断と異常時の対応が必要です。自己注射を希望する場合は、現在の提供条件や指導・連絡体制を医師に確認してください。

Q.注射後、効果が現れるまでどれくらいかかりますか?

A.効果が現れるまでの時間や持続する時間は、薬剤、用量、EDの原因、その日の体調によって異なります。なお、ガイドラインに記載されている注射後10分以内に勃起が発現し30分以上持続するという内容は、血管系の機能を評価する検査についての記述であり、治療を受けた場合の目安として示されたものではありません。両者を混同しないでください。

Q.注射の痛みはどの程度ですか?

A.検査として行う場合には、なるべく細い注射針を用いるとガイドラインに記載されています。ただし、痛みは自己注射の継続を中断する理由として多いとも記載されており、負担が小さいとは言えません。感じ方には個人差があります。痛みがほとんどないといった説明を見かけた場合は、その根拠を確認してください。

Q.EDの注射治療はどの医療機関でも受けられますか?

A.どの医療機関でも受けられるわけではありません。注射の目的と方法によって取り扱いが異なるため、受診先に直接確認してください。ウェブサイトに案内がないことだけで、提供していないとは判断できません。

まとめ

EDの陰茎海綿体注射は、診断と治療、院内注射と自己注射を区別して理解する必要があります。2018年版ガイドラインには当時の自己注射の承認状況と実施条件が記載されていますが、現在の条件は薬剤・方法ごとに確認してください。

治療を検討する場合は、期待できる効果、持続勃起症などのリスク、費用、異常時の連絡先について説明を受けましょう。勃起が4時間以上続く場合は、夜間でも速やかに医療機関を受診してください。強い痛みなどがある場合は4時間を待たずに相談してください。

参考・出典

日本性機能学会・日本泌尿器科学会 ED診療ガイドライン[第3版](2018年) https://www.jssm.info/guideline/files/EDguideine03_s.pdf

厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン、令和8年3月30日最終改正) https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf

医薬品医療機器総合機構 バイアグラ錠25mg/50mg 電子添文 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/671450_2590018F1020_1_05

厚生労働省 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html

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